オリーブオイルは油っこい?
patate
我が家では食事の際、熱々のパスタのお皿の上にさっとオリーブオイルを振りかけます。日常の一食であれば、それほど手の込んだものでもありませんし、もともとパスタ料理は手軽でスピーディーなのが取り柄でもあるので、慌ただしい一日には非常に便利です。そして最後の仕上げに加えられるのは、もちろんヴェローニのエクストラバージンオリーブオイル。もう、この一振りで、少々手抜きのひと皿が立派な味わいになってくれます。



また食事を友人と囲む際、もちろんオイルを使うのですが、じつは意外と多くの人が最初はちょっと怪訝な表情を浮かべたりすることがあります。すでにオイルを使って調理された料理に、さらにオイルを追加するというのは、「油っこく」なると想像してしまうのかなと、思ったりもします。しかし、実際に一振りしてみれば、油っこいどころか、その豊かな味わいと芳香に、必ず驚嘆し、表情が笑顔に変わるのを、何度も目にしてきました。

こういった経験から、やはり日本ではオイル=油っこい、という概念は往々にして、固定観念として定着してしまってはいるけど、実はまだまだ改善の余地があるのではと思ってしまいます。



この「油っこい」という感覚。個人差や環境や習慣と密接な感覚ですので、一概に評価して、比較することもできない非常に難しいものです。この感覚にたいして、わたしの率直な考えは、上等なシングルエステートのエクストラバージンオリーブオイルは、ほとんどといっていいほど油っこさなど感じさせないものだということなのですが、これも個人の評価であって、必ずしも万人にいえることではないのかもしれません。このあたりが非常に表現に苦しむところです。

たとえば上質な日本酒は、フルーティーでまるで澄んだ水のようだ、という表現をよく耳にします。おそらく、こんな感じに近いのかもしれません。その種類の中でももっとも上等であるとされるものだけが、種類全般の持つアクやマイナス要素を全て打ち消し、さらなる高みに存在しうる・・・などというと、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、わたしはそんな印象を持っています。



パバロッティは、公演の直前にコップ一杯のオリーブオイルを飲んでいたというのは有名なエピソードですが、オイルを飲むなんて、と感じた方も少なくないのではないかと思います。先の首相でしたら、目を丸くして倒れてしまうかもしれません。でも、実際に上質なオリーブオイルには「飲用」と書かれているものさえあります。イタリア人にしてみればそれは意外でもなんでもなく、非常にイタリア的なエピソードとして、それ故に多くの人の目にとまる話となったと思いますが、このエピソードも受け止め方は様々でしょう。

食は習慣ですので、慣れない日本人がいきなりコップ一杯のオリーブオイルを飲んだりすれば、それは必ずしもいい効果ばかりでもないような気がします。カロリーも気になりますし。しかし、日常に食べ慣れてる料理に、ほんの少し、こういった質のよいオリーブオイルをつかってみれば、そこには固定概念を覆す、新たな境地が待っているはずなのです。



油っこいという感覚のひとつには、食べたときではなく、食後の感覚も大きく作用しています。普段と違う食事をしたときなど、必要以上に食後の感覚が不慣れな感じがしてしまうものです。こういった油っこさを巡る感覚は、ひとつの切り口で簡単に解決できないものだと思いますが、先の日本酒がおいしさだけでなく、上等な酔い心地を与えてくれるように、上質なオリーブオイルは、食後のひとときすら、優雅にしてくれるとわたしは感じています。



またグルメには、他人と違う密やかな楽しみという側面もあるかもしれません。しかし、イタリア料理やオリーブオイルの楽しみは何といって家庭でのひとときです。レストランでしか味わえない特別なものではありません。日常のひと皿の料理が、これほど簡単にごちそうに変化する食材です。できることなら多くの人にその喜びを知って欲しいと思うのです。



今回はあえてまとめ的なことは書きません、その理由は、感覚の問題を、自分の感じ方だけで断言したくはないからです。ただここでは上等なシングルエステートのエクストラバージンオリーブオイルは、他の食用油と、そしてそれ以外のオリーブオイルとも全く違う特別なものであるということだけ、ここでは書き留めておきたいと思います。
author:, category:オリーブオイルのお話, 17:46
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