オイルをかけて食べる、ということ
caponata 
ずいぶん昔の話ですが、日本の村山首相がイタリア訪問の際、油っこい食事で倒れたという「事件」がありました。その時私たちは偶然にもイタリアにいたので当時の報道はそれほど詳しくないのですが、あとから見てみると、「イタリア料理の油っこさに健康を害した」というものだったようで、これはもうイタリア料理を少しでも知っている方なら、この方が卒倒するというか、実に困惑する「事件」でもありました。

 くだんの報道では、ありとあらゆるものにオイルが使われて、というようなことが書かれていましたが、おそらく多くの日本人がこの表現だけで「油っこい」をイメージしたのではないでしょうか?
ありとあらゆるものとは、少々言い過ぎかと思いますが、実際イタリア料理のほとんど全てにオリーブオイルを使いますし、その風味を味わうために調理用だけでなく、サーブされた料理にもオリーブオイルをかけて食べます。調理用の油は、風味だけでなく金属の調理器具を使う以上無くてはならないものでもありますが、できあがった料理にオイルをかけるという行為は、サラダ以外には日本人にはあまりポピュラーではないのかもしれません。



 実は上等なオリーブオイルは、単に「油」という存在ではなく、もっとも高級な調味料なのです。

外国人から見ると、日本人はなんにでも醤油をかけて食べると見えるらしいですが、確かに醤油さえあれば、わたしも大抵のものは食べることができます。気に入らない味でも醤油をちょっと垂らすだけで、食べられたりしてしまいます。醤油は香りや味わいだけでなく、なにより塩分ですので、かけて食べれば醤油ならではのしょっぱさにすることができますので、この場合の調味料としての役割は、味を整えるということになります。一方、調味料としてのオリーブオイルは、たくさんかけても味覚的には大きな変化はしません。オリーブオイルの調味料としての効果は、そのさりげない味わいの中に含まれた、少しづつの風味のハーモニーであり、そしてなにより優雅な香りです。つまり、味を整えるために追加するのではなく、風味を豊かにするためにオリーブオイルを追加するのです。しかしこの非常にデリケートな調味料の1滴は、さりげないひと皿を、何とも豪華なごちそうに変化ささせるほど、驚くほどの効果を発揮します。



 熱々に盛られたパスタに、パルミジャーノをすり下ろして、上等なオリーブオイルを一振り。味わいを知っている方なら想像しただけで、立ち上る香りを想像しただけででお腹が鳴ります。あるいは、ちょっとこんがりグリルしたお肉の上に、あるいはスープに。こうした食べ方なら、ほとんどの日本人でも油っこさというよりも、その風味の豊かさを味わえるでしょう。
でも、生のフルーツや、デザートにまでオイルがかかっていたら、そう考えるとちょっとうんざりしてしまうのかもしれません。でも、もちろんそういったレシピでさえ、上等なオリーブオイルであれば素晴らしく美味しいのですが。

 仮にも日本の首相を招いての食宴で供されたオリーブオイルは、食材にうるさいイタリア人のことですので、私たちが滅多に味わうことができないほど上質なオリーブオイルだったはずです。わたしにはこの「事件」は、どうしても、日本人がイタリア料理、あるいは西欧料理全般に抱いている「油っこい」という固定観念と結びついているようで、それがとても気がかりなのです。もちろん、食べ慣れない料理や、他国の文化ですから、慣れも、知識も必要ですし、食事には体調や、その時の環境など様々な要素が絡んでくるので、一概にこの真相を解明することはできないのでしょうが、イタリア料理=オリーブオイル=油っこい、という固定観念が一人歩きしてしまわないよう祈りたいものです。


オリーブオイルの基礎知識
author:, category:オリーブオイルのお話, 18:39
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