世界遺産オルチャ渓谷



 先日、NHKでトスカーナのオルチャ渓谷の特集番組がありました。

 トスカーナにはなんと6つもの世界遺産があります。フィレンツェ、サンジミニャーノ、シエナ、ピエンツァの歴史地区とピサのドゥォーモ広場、そして2004年に認定されたオルチャ渓谷(Val d'Orcia)です。このうち最初の5つは日本からも毎年たくさんの観光客が訪れる世界的名所ですが、これらに比してオルチャ渓谷を訪れた日本人は多くないのでは。

 オルチャ渓谷一帯は小高い丘の連なりに糸杉が立ち並び、オリーブ畑やぶどう畑の間から石造りの建物が顔を出す、典型的なトスカーナの田園風景です。どこを撮っても絵葉書になりそうなすばらしい風景ですが、これは決して手つかずの自然の姿ではありません。自然と人間の知恵とがみごとに調和し、一体となった姿なのです。中世イタリアの都市国家は丘の上に城壁を築いてその中に街を作りましたが、都市の繁栄を支えていたのはそ周辺に広がる田園地帯がもたらす恵みでした。番組でも、痩せた土地を住民たちが何世代にもわたって耕し、田園の景観を守り続けている苦労などを伝えていました。

 私は13年前、この地を夫と自転車で旅した時のことを懐かしく思い出しました。世界一美しいともいわれるトスカーナの田園地帯を、一年で最も美しいといわれる5月から6月の2ヶ月間、全行程約1500kmを駆け抜けた自転車とキャンプの旅です。初夏の光を浴びてきらめくオリーブの木々や真っ赤なひなげしの花畑のなかを抜け、牧草を食む羊たちのベルの音を聞きながら、糸杉の立ち並ぶいくつもの丘を越えて、小さな村々を訪れました。それはまさに夢のような情景でした・・・。 そして、人が自然と共存しながら暮らしを営む姿に、手をかけた我が子を慈しむような 愛情が感じられ、とても感銘を受けました。この時の感動が、ストラーダ・ビアンカを立ち上げる原動力となっているのです。

 ヨーロッパとアジアの自然観は同じではないと思いますが、我が国にも、昔から自然と人が共生する、「里山」という文化がありますよね。森羅万象に神々の存在を認め、畏怖しつつ、人が生き抜くために自然から搾取するばかりでなく育てること決して忘れませんでした。(私の中では里山というと「となりのトトロ」に描かれている村の様子が思い浮かびます。)自然を破壊する、あるいは保護するといった人間側からの一方的な視点ではなく、共に生かし合うことが大事なのでは。トスカーナの美しい田園風景を見ていると、わたしたち日本人が失いかけている大切なことを教えてくれているような気がします。
author:, category:トスカーナについてのお話, 17:41
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