最近オリーブの器について、いろいろ尋ねられるのですが、なかなかうまく説明できないのが「水漏れ」のこと。
無垢の木の、未塗装の木の器は、木目の間から水分が染みだしたり、漏れる場合があるのです。
これはオリーブに限ったことではなく、木製の器では当たり前にある現象ですが、オリーブの豊かな木目は、時に予想もつかない変化をする場合があります。カッティングボードでは問題ない現象でも、器となると見過ごせないこともあり、かといってどの木目がどうなるかは、お使いの環境や、木そのものが持っている性質により異なりますので、一概に答えは見いだせません。
木の器を取り扱っているお店を見ていると、最初から「水漏れすることがあるので、菓子盆や乾き物だけにお使いください」と明記されていたりすることもよくあります。
これは販売する側からすれば、非常によく分かることで、たとえ水が染み出したり、漏れてもクレームを受け付けませんよといっているわけです。
でも使う側からすれば、全くダメと言い切ってしまうのも、ちょっともったいない感じもします。
全ての器が水漏れするわけでもなく、またこの水漏れも、木目が呼吸することで、毎回微妙に変化しますので、はじめから水物ダメと言い切ってしまうのも残念すぎる気がすのです。
いろいろ考えていくなかで思うのは、「なんで木の器なのか」ということです。
少しでも水が漏れることがあるなら、器としてはダメなんじゃない?という意見もあり、やはりそうお考えの場合は、木の器ではなく、陶器をお選び頂くほうが賢明とも思います。
でも、木の器には、陶器にはない魅力がいっぱいあるのです。
木肌の柔らかなあたたかみ、他の食器と触れ合う時の音、そしてその佇まい。
水も漏らさぬ陶器やプラスチックの器の、その性能には及びませんが、木の器ならでは楽しみというのは確かにあるのです。
その楽しみのためには、やはり木の特性も一緒に楽しむ気持ちが大切なんだろうなと思うのです。
そういうおおらかさとか、木を見つめる優しが、その暮らしを暖かな安らぎに満ちたものにしてくれるんじゃないか、そんな気がします。
水漏れといってもほとんどの場合が、サラダボウルとして使う程度では全く問題ありません。
もちろん木の器らしく、お菓子や水気のないものでお使いいただくのも大丈夫。
スープや汁物をたっぷりよそったりした時はちょっと注意が必要です。
その場合も、漏れ具合に応じて、下に一枚お皿を引くなどすれば使えることもよくあります。
使い手が木の特性を感じながら、その時々にちょっと工夫をしてあげれば、それほど気をもむことではないのかもしれません。
以前、有名なあるお店が、木の器は水が漏るとクレームが多すぎるので取り扱いを止めたという話を聞いたことがあります。
今では、そういうクレーム問題を避けるため、さまざまな商品が予防を講じたり対策をねっています。
その結果、商品が良くなる場合もありますが、本来自然の作るものの場合、改悪になる場合も実は多いのです。
野菜に虫食いの跡がついたらクレームになるので、農薬を使います。
美しく、虫のつきにくい野菜を育てるために遺伝子操作をします。
農薬は大地にも健康にも、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。
遺伝子操作の危険性は、現在よりも未来に向けての不安の拡大かもしれません。
そして多くの無垢の木は、ウレタン塗料で塗装されます。
ウレタンなんて口にしたくもないはずなのに。
オリーブの木は、はじめから材木として育てられた木ではありません。
オリーブの実を採るために、大切に何十年、何百年と大地とともに、何世代にも渡って守られてきた木です。
そんな木ですからこそ、複雑で美しい木目になり、キッチン用品となった今も、私たちの暮らしを楽しませてくれます。
その木目が生み出す様々な現象も、できることならゆったりと楽しむ。
そんな気持ちも、木の器と付き合う上では大事なことなのかもしれないなあと思うのです。
そして単に問題点をクレームとして処理するだけじゃなく、その特性をもっと理解し、上手にお伝えすることも私達にとっては大事なこと。
まだまだこれからも、良い方法を考えていきたいと思っています。