オリーブの花

 

今年も国立店の店先にあるオリーブの花が咲きました。
小さな可愛い花です。

鉢植えなので、それほど大きくもならなし、一本植えなので実をつけることもないのですが、毎年小さな花を楽しませてくれます。
近所にもオリーブが何本か植えられているので、受粉したらいいなあと思うのですが、なかなかうまくはいかないものです。
受粉はハチなどの昆虫による働きが大きいのですが、一本だけのオリーブにはそうそうハチもたくさんは来ません。

この木の太さは、根元の方でもせいぜい直径で3cmほど。
鉢植えだからとはいえ、すでに我が家に来てから15年以上の月日が経ちます。
おそらく樹齢でも20年以上にはなるのでしょう。
本当にオリーブの木はゆっくり育つものだと思い知らされます。



そんなことを考えていると、ヴェローニ農場のオリーブ畑の景色が頭をよぎります。
間隔を広げて植えられたオリーブたちが延々と広がるサンマルティーノの丘。
有機栽培のオリーブ畑は、丁寧に下草を手入れしないと雑草が伸び放題になってしまいますが、日々の管理でそんなこともなく、かといって除草剤のような根こそぎ大地が丸裸になるようなこともなく、人と自然が向き合っているゆったりとした景色。
鹿や野うさぎの糞やイノシシが掘り起こした跡などもあり、オリーブ畑はトスカーナの自然の一部なんだと思わせてくれます。

現在イタリアでは南部のプーリア州を中心に、ピアス病菌というオリーブのウィルス被害が深刻だと聞きます。
このウィルスにかかると、木は根から水を吸い上げることができなくなり、やがては枯れてしまうそうです。
そしてウィルスはその地域に次第に蔓延し、被害を拡大するという恐れがあります。
それを防ぐには、その木を切るしか無いという・・・

数百年という間、何世代もの人々を養いつづててきた働き者のオリーブが、そんな病にかかり切り倒される。
なんとも悲しい運命です。
ヴェローニ農場など、イタリアで古くからあるオリーブ農場はゆうに500年もの歴史を持ちます。
そこには500年前から植えられているオリーブの木も珍しくありません。
ルネッサンスの時代、ボッティチェッリやダ・ヴィンチ、ミケランジェロの時代をも肌で知っているオリーブたち。
過酷な歴史の波に翻弄されながらも生きながらえていたオリーブたち。
そんな木々に危機が迫っていると聞くのは、なんとも心苦しい物があります。
もちろんオリーブオイルが収穫できなくなる、オリーブオイルの値段が高騰する、というのも経済の動きとして気になることではありますが、それ以上に人々とオリーブが紡いだ愛情の深さゆえ、そこにある悲喜こもごもを思うと胸が痛くなります。

イタリア人がオリーブに寄せる愛情は、日本人が桜の木に思う気持ち以上に強いのでは、と思うことがあります。
桜、特にソメイヨシノはその華麗な花々で春のひとときを熱狂させます。
オリーブの花には、そんな艶やかさはありませんが、この花が咲き、実をつけることは、彼らにとって、自らの命の源と深く結びついているとう感覚。
オリーブが実るということが、すなわち日々の暮らしの礎であるという感覚。
そんな生命に深く結びついているオリーブの木たち。
それはまさに彼らにとって、自らの命そのものといってもいいのかもしれません。

5月の明るい日差しを浴びて揺れる、店先の小さなオリーブの花を見ながら、遠い地の出来事に思いを馳せ、被害が大きくならないことを祈っています。

author:STRADA BIANCA, category:オリーブのこと, 15:11
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